リストラから考える日本の今までとこれから、そのメリット


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大企業の大量リストラと高度経済成長期における日本の労働システム

不正会計問題をきっかけに業績不振が鮮明になった東芝は2015年の12月21日、新たなリストラ策として「ライフスタイル部門」を中心として人員削減を数千人規模で行うことを決定しました。

同社は不正会計問題引責辞任した田中久雄前社長時代の13~14年にもテレビなどの不採算部門でリストラ策を実施していたのですが、今回の業績不振によってそれが不十分だったことが明らかとなったことがきっかけです。

大変由々しき事態ではありますが、近年の日本ではこのように数多のリストラが相次いでいます。

これには70年代半ば以降のオイルショックや円高がきっかけであるといわれていて、かつて企業組織において前提として共有されていた「まじめに働いていればいずれは報われる」といった日本独特の長期的労働に対する動機づけの構造は変化しつつあります。

そもそも近年の日本の企業社会システムにおける基本的な価値体系とは、特に戦後の近代化を推し進めてきた産業化と民主化のイデオロギーに分類されます。それを支える自由、平等、競争、公正、進歩といった基本概念は近代西欧社会の歴史の中で生まれた葛藤によって形成されているのです。

つまり、日本は既製のイデオロギーを表面的に借りてきているだけなので、そこに日本独特のプレ・モダン的な色彩の濃い風土を合わせて独自の経営システムを生み出すことができました。それが高度経済成長期以降の「会社主義」です。

「会社があってこその労働者」ともいうべきこのイズムは、キャリアの伸びと企業の成長に大きく関係しています。
とくに、OJTが長期にわたる訓練課程であると同時にフォーマル・インフォーマルな評価課程でもあるため、人々の組織に対するコミットメント度合いはより強固なものとなりました忠実、従順であることが評価され、積極的なコミットメントが求められるのです。

そんな長期雇用社会の日本ですが、先に述べたとおり変化し始めています。豊かな時代に育った若い世代を中心に、働く意味、会社とのかかわり方が少しずつ変化しだしているのと、先に述べたオイルショック、バブルの崩壊によって変化せざるを得ない状況になってしまったのです。

そんな高度経済成長期に置いて主軸とされてきた終身雇用が失われつつある日本ですが、もちろんリストラは悪い面ばかりではありません。次段落ではリストラのメリットについて触れようと思います。

 

リストラのメリット

そもそもリストラとは、英語で「再構築」を意味する「Restructuring」を語源としていて、本来は経営方針の見直しと再構築のために行われます。

しかし、「人員整理」といったネガティブな印象の強い言葉として扱われてしまっているのが現状です。
ですので、メリットを見出すということなら本来の「再構築」という意味にフォーカスを絞ることで活路を開くことができるでしょう。

まず、一番のメリットですが、広域的な意味での人件費の削減です。単純に給料分の節約に繋がることもありますが、特に注目したいのが光熱費、設備費、空間といった経費圧縮です。これがとても大きくて、一般に人を雇うのに給料の三倍を使って維持しているとまで言われています。

また、人が減るということは活用可能なスペースが増えるということですので、今まで使っていた倉庫の中身をオフィス内に置くことで物流の固定費削減にも繋がります。

このように、会社を経営していくうえで人件費は経費の大半を占めているので、ここを整理することによって新しく活動することができる資金を生み出すことができます。リストラをしなければいけない状況に陥ったということは、これまでの経営方針に問題があるということです。
社会的な不況や経済の流れといった、どうしても回避不可能な問題もありますが、だから仕方ないと諦めるのは得策ではありません。

大切なのは、「時代という流れ」と「栄華を築き上げた経営理念・システム」とを組み合わせることです。そのためには、残酷なことですが人件費を削り、態勢を立て直すことは必要なことだと言えるでしょう。

 

今回、東芝の人員削減を発端にリストラについて触れてきましたが、いかがでしたか。経済状況はもちろん、国民一人一人の考え方まで変わってきた日本は転機を迎えているのかもしれませんね。

これまでの経営システムの崩壊や若者の職業観の希薄から来るニートやフリーターの増加、モラトリアム期間の長期化等の変化し始めている日本に、今度は会社や私たちが対応するべきなのかもしれません。

そのためには、かつての考え方を一度解体し、現状を理解したうえで新しい一歩を踏み出す必要があるでしょう。

 

参考文献

http://setupwagasha.com/d04restructuring.html

http://yoridoko.jp/40/

雇用形態による格差問題と新しい雇用システムの展望 平山竜也著

終身雇用は特殊日本的雇用形態か 日本的経営環境としてのリストラ 武井良明著

雇用形態の多様化と雇用調整 三木準一著

マネジメント P.Fドラッカー著

世界一シビアな社長力養成講座 ダン・ケネディ著

企業社会システム論 谷本寛治著