第一次世界大戦による国際関係の解体と新しい安全保証制度の創造



かつて世界はとても広いものでした。ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカといったように大陸ごとに地域にわかれ、国家は基本的にその中の近隣諸国と交流したり争ったりしたのです。

しかし、少しずつ人の行動範囲が広がっていった結果、そのようなくくりや規模を超えた戦争が起こりました。

それが第一次世界大戦。初めて全世界規模で行われた大戦争です。

世界大戦はまさに世界を解体しかねない災厄でした。しかし、だからこそ人々は戦争後により広い視野を持った安全保障制度を作ろうと考えました。

大戦は世界の解体の危険とともに、地球レベルの平和組織を創造するきっかけになったのです。

 

世界大戦の理由は植民地を含めた領土の利権争い

第一次世界大戦は1914年から1918年まで続きました。数十年単位の戦争もありますから、期間的には長いとは言えません。

しかし、その参加国の数は今までの比ではありませんでした。実にヨーロッパ周辺諸国を中心とした33ヵ国が2陣営にわかれ争ったのです。

戦争になった大きな原因は、ヨーロッパ列強の植民地を含めた領土争いといえるでしょう。

特に、国内の統一が遅れたため植民地の獲得が思うようにできなかったドイツとオーストリアは、巻き返しのチャンスを探していました。

またドイツは20世紀初めに重工業化に成功し、急速に国力を高めていました。そのため、同民族であるオーストリアと組むことで、ライバルであるイギリスやフランスを圧倒できると考えたようです。

そのような背景の下、ある事件が起こります。1914年6月28日にサライェヴォで式典に参加したオーストリアの皇位継承者夫妻が、セルビア人学生によって射殺されたのです。(サライェヴォ事件)

オーストリアはこの事件を逆手に取って、1914年7月28日にセルビアに対して宣戦布告しました。ドイツとオーストラリアを代表とした同盟国と、セルビアに味方したイギリスとフランスを中心とした連合国にわかれて、初の世界大戦が始まりました。

 

死亡者1,400万人に達した悲惨な大戦

当初、ドイツとオーストリアは快進撃を続け、フランスとロシアに対して大きな勝利を収めます。特に劣勢になったロシアは国内の食料や物資が不足して物価が高騰し、後に起こったロシア革命の遠因になりました。

しかし、ドイツは勝ち続けることができませんでした。徐々に英仏連合に押されるようになり、持久戦に移行していきます。

さらに1917年にアメリカが連合国側に参戦すると、敗戦が増え始めました。

状況が不利になるにつれドイツ国内に厭戦気分がはびこり、1918年10月、ついに民衆が立ち上がり革命が勃発します。

革命が成功し帝政から共和制となったドイツは連合国へ降伏しました。1919年6月にベルサイユ講和条約が締結され、大戦はやっと終結します。

約4年間での死亡者数は民間人も含めて約1,400万人を超え、負傷者は約2,000万人に達したといいます。

それは空前絶後といってもいい被害数でした。

 

解体された戦前の国際関係と、新しい安全保障制度


この大戦によって、世界は確実に変わりました。

戦争中にロシア、ドイツの革命が起こることで旧帝国国家が崩壊したこと。属国や植民地の独立。イギリスの没落とアメリカの繁栄。ソビエト連邦という世界初の社会主義国の誕生など、大小を含めさまざまな変化が一気に起こったのです。

しかし、もっとも重大な解体と創造は国際関係でした。

従来の国家関係は、各国がそれぞれ同盟や条約を結び、互いの力関係を調整することで勢力を均衡させ戦争を避けてきました。

しかし大戦によって、従来の均衡は簡単に破れるばかりか、世界規模の戦争さえ起こりうることが実証されてしまったのです。

さらに今まで世界を引っ張ってきたイギリス、フランス、ドイツ、イタリアといったヨーロッパの力ある国に加えて、アメリカとソビエトという新しい大国が現れ、独立国も増えました。

つまり、各国の自主的な外交調整だけでは国際間の平和を保てない状況になったのです。

そこで、新しい安全保障制度としてアメリカが提唱したのが「国際連盟」でした。

国家ごとに外交をして勢力を均衡させるのではなく、参加国が集まって話し合う協議の場を設け、全世界的視野で国家間の紛争を解決しようとしたわけです。

それは世界初の地球規模で行われる安全保障会議の創造でした。

 
残念ながら国際連盟自体は、アメリカとソビエトという新しい大国が2つとも加わらなかったため、十分な安全保障力を発揮できず、再び大戦を引き起こしました。

しかし、第一次世界大戦という悲劇が従来の安全保障手段を「解体」し、新しい平和への道を「創造」したことは事実です。

第二次世界大戦後、国際連盟の失敗を踏まえて「国際連合」が発足しました。それは国際連盟という制度自体は、世界平和にとって有用だと各国が認めていたからでしょう。

問題は制度をどのように活かすかです。第一次世界大戦によって創造された「国際的な安全保障会議」という考え方は、まだまだ完成したわけではありません。

少しでも早く、平和な国際社会が実現するといいですね。

 
【参考文献/サイト】
・武光誠(2002)『世界地図から歴史を読む方法2』河出書房新社.
・世界史の窓「第一次世界大戦」http://www.y-history.net/