公式文書もデジタル化。まだ知らない人も多い電子政府への変化



現在は当然のように受け入れられているデジタルデータ。

買物も予約もインターネットを通じて済みますし、お金すらデジタルデータで管理されています。公的な申請も一部はデジタルデータを利用してネットでできます。

21世紀に至るまでは、公式書類や帳簿は紙で管理するのが必須でした。それすら今はデジタルデータ管理が認められています。

今の人からは想像できないかもしれませんが、紙という形に慣れていた者からすれば、形がないデジタルデータはとても不鮮明でわかりにくく、それでいて画期的なものでした。

デジタル化は紙書類が主流だったの文書管理の概念を解体し、新しい管理システムを広げたのです。

 

日常で使われる当たり前のデジタルデータ

現在の人々は普通にデジタルデータを利用して生活しています。

日々のお買い物もカードで支払いできますし、インターネット通販なら必要なデータを打ち込むだけで品物が手に入ります。

テレビ、電話、スマートフォンもデータ通信ですし、一昔前は紙でしか流通していなかった新聞、書籍、雑誌、チラシ、パンフレットなども、ほとんどがデジタルデータに置き換えられ、PCやタブレットで読むことができます。

しかも公式書類や帳簿、証明書の類までがデジタル管理が認められているのです。

この手の公式書類は各種法律で紙で管理することが義務付けられていました。その管理がデジタルデータでも認められるようになったのは「電子政府の実現」が政府の方針となったからです。

 

電子政府を目指す政府の具体的な政策

「電子政府」とは、今まで国民や事業者が役所の窓口に足を運んで対面し、書類と口頭によって行われていた行政業務を、オンラインネットワークを通じてできるようにすることを意図したものです。

日本では、2000年11月にIT戦略会議でIT基本戦略が決定し、それに基づいてe-文書法が2004年11月に成立しました。これは紙文書のデジタル管理を認める法律で、現在では約250もの法令や省令に決められている文書を電子管理できます。

たとえば会計帳簿や証憑書類(見積書、注文書、契約書、納品書、領収書など)、振替伝票、議決権行使書、定款など、従来は紙での管理が義務とされていた書類の多くがデジタル管理を認められることになりました。

また、電子政府窓口「e-Gov」が設置され、2001年から本格的に運用されています。これは総務省行政管理局が運営するサイトで、法令検索や行政上の申請・手続きがオンライン上でできるなど、電子政府の形をもっとも具体的に表しているサービスです。

平成27年度では電子申請だけでも年間2億件以上利用されるようになっています。

 

公式書類管理上におけるデジタルデータの利点と欠点

このような公式書類のデジタル化は、従来では信じられないことでした。

確かにデジタルデータは紙文書に比べ、保存が容易で保管コストが低く、さまざまな加工や変更に加え共有化もできるので、業務を効率化できます。バックアップも簡単で持ち運びも楽ですし、災害にあっても速やかに復旧できるという利点は大きいでしょう。

しかし長所と短所は紙一重です。デジタルデータはコピーもデータの改ざんも紙文書より簡単ですし、オンライン上の情報漏洩の危険性など、公式文書としてもっとも大切な証明能力が低いという欠点がありました。現に今でも企業が管理する個人情報の漏洩問題は、たびたびニュースに取り上げられます。

デジタルデータの改ざんを分析したり防いだりする技術や手段が発達した面もありますが、紙文書に比べれば信頼度は落ちるのです。

それでも、政府は慎重に対象法令・省令を選択して、紙文書のデジタル管理を認める方向に進みました。

時代の流れとして避けられないこともありますし、うまく利用すれば行政業務の大幅な効率化ができます。それは確かに国民や企業にとっても大きな利点でした。

今までは平日の限られた時間に役所の窓口で行わなければならなかった行政上の届け出や申請が、24時間ネット上でできるといったように、昔の行政では考えられない利便性があるからです。

 

いまだからこそもう一度見直そう。紙書類とデジタルデータの管理法


このように今は公式文書も含めほとんどの情報がデジタル化されています。現在の人々はそれを当然のように受け入れていますが、デジタル化は従来の文書管理の常識を解体したといえます。

しかし、それはまだまだ未完成な部分が多くあるのです。紙文書とデジタルデータの違いをよく見極めて、何を電子化し、どれを紙文書で管理するかは、慎重に選択する必要があります。

いま一度、大切な情報がどのように管理されているか見直してみてください。デジタルも紙文書もうまく使いこなしてこそ、効率的で安全な情報管理ができるのです。

 
【参考文献/サイト】
・経済産業省「文書の電子化の促進」http://www.meti.go.jp/
・電子政府窓口「e-Gov」http://www.e-gov.go.jp/l
・e-Govの利用状況https://www.e-gov.go.jp/
・日本画像情報マネジメント協会新資格制度委員会(2007)『新しい文書情報マネジメントの基礎と応用』日本画像情報マネジメント協会