出版業界の通例を解体するかも!アマゾンジャパンの新サービス



今、出版業界は大きな変化の波にさらされています。電子書籍やPOD(プリント・オン・デマンド)というサービスによって、書籍の販売方法が多様化してきたのです。

しかも2017年3月、アマゾンジャパンは取次業者を経由せずに直接出版社と取引して、発売日当日に書籍を届けるサービスを発表しました。

実はこれは今までの日本における書籍流通を解体するような出来事なのです。

何が違うのか。どう変わるのか。あまり知られていない書籍流通についてご紹介します。

 

日本の書籍流通の仕組み

私たちが買う書籍や雑誌、コミックは、出版社から直接小売業である書店に配本されるわけではありません。

基本的には出版社から取次販売会社に本が送られ、そこから各書店など小売業者に配本されます。いわば問屋制度です。

2014年のデータによると、出版社は約3500件、書店は約12,000店あります。もしそれぞれが個別に発注と配本を行えば、その手間は計り知れません。

例えば小さな出版社がヒット商品を生み出したら、全国から1万件以上の発注が一気に押し寄せることになります。ミスもでますし、在庫や返品の管理コストも膨大になるでしょう。本来の事業は書籍の出版のはずなのに、受注や配本業務などで忙殺されることになります。

そのため取次販売社が両者の間に入って発注、配本、在庫管理、代金回収などを仲介することで、効率的に書籍の流通、販売を行ってきたのです。

書店にしてみれば、取次販売社へ連絡すればほとんどの出版社の本を発注できますし、配本や返品も取次販売社を通して行われますからとても便利な制度でした。

ところが、インターネットとデジタル化が進むことで、今までの制度が大きく変わっていくことになります。

特に2017年3月に発表されたアマゾンジャパンの直接集配は、出版業界に大きな驚きを与えました。

 

アマゾンジャパンによる従来の書籍流通の解体

インターネット通販サービスであるアマゾンジャパンは、2017年3月に取次販売社を経由せず、出版社と直接取引して書籍や雑誌を販売するサービスを発表しました。アマゾンが出版社から直接書籍を集荷して、インターネットで販売し、購入者に宅配します。

つまりアマゾンが取次販売社と書店を兼ねる形になるわけです。インターネットができる環境があるなら、取次販売社や書店が無くても書籍や雑誌を購入できることになります。

これは従来の書籍販売ルートの解体といっても過言ではありません。

前述したように本来の書籍流通に取次が必要だったのは、出版社と書店の数から発注と配本作業が膨大な量になるからでした。

しかしコンピューターの普及、デジタル管理化、インターネットなど技術が進んだことで作業が効率化し、その結果アマゾンのような、インターネット販売と集荷配送、在庫管理ができるシステムが可能になったのです。

今までも小さな規模なら出版社と書店の直接取引はありました。しかし、このような全国レベルでの展開は初のことです。

 

出版業界の多様化と新しい可能性


今後は取次販売社という仲介の存在意義が問われるようになるでしょう。

すでに書籍の販売窓口も書店だけでなく、インターネットサイトやコンビニエンスストア、スーパーなど多岐に渡っています。電子書籍やWebコンテンツ、アプリなど紙書籍に代わる新しい本の形も普及してきました。

このようにみると、今の出版業界は従来の常識やルールが解体されつつあります。アマゾンジャパンの直接集配はその流れを加速するのではないでしょうか。

しかし、だからこそ出版業界には注目です。これから新しい多様なサービスが次々と生まれてくる可能性があります。

もしかしたら、想像もできないような消費者にとって素晴らしいサービスに出会えるかもしれません。

 
【参考文献/サイト】
・日本経済新聞「アマゾン、本を直接集配 発売日に消費者へ 」http://www.nikkei.com/
・日本著者販促センター「出版業界の豆知識」http://www.1book.co.jp/