スティーブ・ジョブスと孫正義のタッグが普及させたiPhoneが解体し創造したもの


爆発的に普及をしたアップル社のスマートフォン「iPhone」

img_iPhone X01出典:https://www.youtube.com/

今や日本人の3人に1人のポケットに入っていると言われているiPhone。世界では2016年に累計販売台数が10億台を突破したiPhoneはアップルの収益の大半を占めるまでになりました。2007年に発売した初代iPhoneの発売から10年掛からずに達成した事になります。そして今年2017年にiPhoneは10周年を迎えます。

これまでであれば、昨年発売されたiPhone7の後継機としてiPhone7sなる新機種が発売されそうですが、今年は10周年かつ、「昨今のアップルはサプライズや感動が少ない」と言われていることから、今年発売になる新モデルは「iPhone X」ならぬ名前でリリースされ大幅なアップデートがされるとも噂されれています。

 

「iPhone」誕生と大成功と日本のマーケット

iPhoneを生み出したスティーブ・ジョブスとアップル社再興のストーリーはここ数年で幾度も映画化された事で、ご存じの方をも多いのではないでしょうか。

自らが創業したアップルを追い出されたスティーブ・ジョブスは衰退していたアップル社に戻り、現在でもクリエイティブのトップにいるデザイナーの盟友であるジョナサン・アイブとともにiMacやiPodといった大ヒット商品を次々と生み出しました。iPhoneはそんな勢いのある時代のアップル社によって生み出され現在に至るまでの栄光の時代を生み出しました。

iPhoneの世界的な大ヒットの裏には日本のマーケットでの成功を語らずには説明することができない。実は日本でのiPhoneの普及率は世界で一位なのです。アップルが展開する地域の中で最も利益率が高い地域の1つでもあります。

iPhoneが日本で普及した理由はいくつかありますが、1つは携帯電話向けのネットワークが全国的に良く整備されていたこと。そして、携帯電話会社が気前よく販売奨励金を出したり割賦販売をして割り引いて「実質ゼロ円」なる施策を展開したこと。そして、i-modeなど「携帯電話でインターネットをする」という他の先進国にはなかった文化が日本には普及していたことです。

当初、ソフトバンクが独占的に販売していましたが、時を経て3大キャリア全てが扱うようになり、更にその販売台数は増加しました。人口1億人を誇るマーケットでの大成功はアップルを確実に勢いづかせました。

実は、ソフトバンクの孫正義社長はアップルのスティーブ・ジョブスと古き友人であり、ある日「iPodと携帯電話を合体させてモバイルインターネット専用機を作って欲しい」と孫正義社長が訴え、すでに極秘裏に開発を進めていたスティーブ・ジョブスを驚かせました。

ここから、独占的販売に話が進んだと言われています

 

「iPhone」が世界で解体したもの

iPhoneの発売当初は「日本では普及しない」と言う方も多数存在しましたが、結果としていiPhoneが21世紀の黒船としてやってきた後の携帯電話を製造・販売する電子機器メーカーで構成される業界は実質的に解体されました。「ガラケー」と呼ばれる日本独自の携帯電話を作っていたメーカーはiPhoneに続くスマートフォンの世界的な競争に負けることになりました。

iPhone登場以前に携帯電話ショップに行くと並んでいる携帯電話の製造元は「シャープ、NEC、東芝、京セラ、ソニー」といったラインナップではなかったでしょうか。今は「アップル、サムスン、ソニー、ファーウェイ、HTC、シャープ」といったように大胆な入れ替わりが起こっています。NECなどメーカーの多くは撤退するか、シェアを大きく落としています。

業績が悪化したシャープは中国企業に買収され、同じく東芝は粉飾で倒産の危機にあり解体の危機に瀕しています。ソフトバンクもボーダフォン・ジャパンを買収して参入した後発で、既存のドコモ・auにとっては黒船です。そのソフトバンクが持ち込み普及させたiPhoneによって日本の携帯電話会社とメーカーの協力関係は完全に解体されてしまったのです。

世界でもノキアやモトローラ、そしてブラックベリーといった、一世代前の携帯電話業界で栄華を極めたメーカーが次々とシェアを落とし撤退されたり、買収されたりしてます。そして、現在では中国に目を向けてみると次々と新興のスマートフォンメーカーが立ち上がり、シェアを拡大しています。

アップル、サムスンが常にワンツーフィニッシュしているが、3位以降は中国メーカーが続き、いつその牙城を崩してもおかしくありません。

 

「iPhone」が創造したもの

iPhoneが創造したものは「未来の前倒し」です。一部の専門家はiPhoneの登場は未来の到来を5年から10年早めたとも言うほどです。「手のひらの上のデバイスでいつでもどこでもインターネットに繋がる」という多くの人が疑っていた未来が現実になったのです。この10年で急速に成長した企業はインターネット関連銘柄が多いです。

フェイスブックやグーグルといった企業は創造をする側の企業でもありますが、この創造の土壌を作ったのはまさしくアップルのiPhoneです。検索が家でしかできなかったら、友達のポストをパソコンを開かないと読めなかったら、これらの企業のサービスがここまで成長できたかは疑問です。Amazonの成功も手のひらでたった数クリックで買い物が完了するからです。

もし、Amazonの体験が「パソコンを開いて、wifiに接続して、ブラウザを立ち上げて、ログインして、買い物をする」というものであれば、世界的な企業になることはなかったでしょう。この視点から言うと、iPhoneの登場はこれらの企業の登場を加速し、様々な業界の解体にも波及しています。

そして、現在、登場しているVR(ヴァーチャルリアリティー)やAR(拡張現実)を楽しむためのヘッドマウントディスプレイやドローンなどが安価に登場するようになったのも、iPhoneが作ったスマートフォンのマーケットのおかげで、センサーなどのパーツのコストが低下し、価格を抑えることができるようになったからです。

今後も自動運転車の普及などiPhoneの登場の恩恵を受けたサービスの登場とそれによる社会の劇的な変化を我々は次々と目にする事になるでしょう。

時代を変えるだけの解体と創造をもたらしたiPhoneを普及させたスティーブ・ジョブスと孫正義は「創造主」と表現できるほどのインパクトをこの世界にもたらしたのです。