インスタグラムの動画時間が延長されたということを、解体と言う観点から考察してみた


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出典 http://www.sircharlesnapier.co.uk/

インスタグラムの動画時間が延長

参考記事 http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/750661.html

上記記事にあるように、インスタグラムの動画は今まで15秒という制限付きでしかアップロードできませんでしたが、新しくそれが60秒まで引き延ばされるようです。

一見大変喜ばしいアップデートだと思われますが、実際にはこれはユーザーの中で賛否両論を呼んでいて、あの限られた時間だからこその楽しみがあったのにという声が挙がっているようです。

要因として、日本では限られた制約の中で見出す創造、つまりツイッターの文字数制限や俳句などが多く愛されているのが考えられます。

しかし、使用可能なスペースが増えたということは、その分だけ可能性も広がったということです。新しく生まれる文化はもちろん、これまでの制限も自己管理によって縛りを付随することによって可能なのではないでしょうか。

そこで今回は、制限が解体されることによって創造されるものを、自己管理と新しい可能性という観点で考察したいと思います。

 

15秒という縛りの恩恵

15秒という時間制限が肯定される理由として、一つはその「リピート機能」が挙げられます。

インスタグラムは動画がその時間数を超過した場合に一秒目に戻るという再生機構を採用していて、これがファストフードのように短い時間でさくっと見れると評判だったために、上記の15秒動画は評判だったのです。

確かに、15秒という短い時間に集約された動画は繰り返して見たくなる程の度肝を抜いた作品が多く、筆者もよくこれで何回もリピートして視聴していました。

また、長い時間の動画再生であればyoutube等の動画サイトが既に在るじゃないか、という声も上がっているようです。これらの理由が、大体の延長反対派の意見と言えるでしょう。

 

縛りを解体するということ

以上のように15秒だからこそのメリットはありますが、そのメリットは縛りというデメリットの反面に生じている副産物です。似たような制限下での芸術表現ということにフォーカスを置くのであれば、1930年、アメリカの映画作品の「在る夜の出来事」中のワンカット、「ジェリコの壁」が有名です。

これはかつて映画界で存在した「ヘイズコード」と呼ばれる映画製作倫理規定を逆手に取った物で、そもそも「ヘイズコード」は当時の映画スター達があまりにもゴシップやスキャンダルにまみれていたために設けられました。

その縛りはあまりにも厳しく、当時の監督たちはまともな作品を作ることができないと深く嘆いていたと言われています。

内容は11の禁止項目と25の取り扱い注意項目で構成され、一応段階を分けての縛りとはなっていますが実際には25の項目もほとんど禁止と同等の扱いでした。

その中には婚姻を結んでいない男女が密室に二人きりで滞在することを禁止するという項目があるのですが、「ジェリコの壁」はこれを逆手にとって実に大胆な行動に出ます。

部屋の真ん中につるし棒があるのですが、そこにタオルをつるして壁を作ったのです。カメラアングルによって男女は異なった部屋にいるように映り、これが「ヘイズコード」に引っかかるかどうかは物議をかもしました。結果としてこれは審査を通り、映画界に大きな衝撃を与えました。

このように、「ヘイズコード」という縛りを逆手に取ることで大きな評価を得ることができました。

 

しかし、だからといって「ヘイズコード」が今なお必要かと言われるとそうではないはずです。実際に「ヘイズコード」はその強制力の高さから既に現代では廃止されています。

確かに、その縛りの存在によって性的関係に至るまでの過程に重点を置き、更にはこれまでの「ベタ」を裏切ることで「在る夜の出来事」は高い評価を受け、これが起因して「スクリューボールコメディ」という新しいジャンルが確立されました。

しかし、これはあくまで個人ではどうすることもできない理不尽を回避するための適応手段です。せっかく自由が与えられたというのに、やっぱり縛ってほしかったというのはいかがなものでしょうか。

 

人間は、抑圧された中で抑えきれなくなった感情を爆発させることで芸術を生み出すと言われていますが、その縛りをわざわざ自ら、それも他人から求めるというのはあまりにも情けない気がします。

その先には、新しい可能性が開けています。それを自ら閉ざしてしまうことは、本当に正しいことなのでしょうか。

現代では「ヘイズコード」のような強い規制がなくなったために多くの素晴らしい映画が生まれています。縛りが解体された結果、新しい文化が創造されたのです。

そもそも自ら求めなくても理不尽な縛りや規制、不幸といったものは勝手に向こうからやってきますから、あえてそれを求めて労力を割く必要はあるのでしょうか。

不幸を乗り越えれば強くなれるといいますが、だからといって不幸を望むのっておかしいですよね。それと同じことだと思うのです。解体することによって生まれるスペースの広さに最初は戸惑ってしまうかもしれませんが、馴れればきっととても居心地良く感じるはずです。

狭い家に住んでいた人が広い家に引っ越したものの、なんだか落ち着かなくて隅っこで固まってしまうのと同じような感覚とでも言いましょうか。せっかく有用なスペースが有り余っているのですから、それを無駄にすることはとてももったいないです。

そもそもインスタグラムのリピート機能自体は今なお健在なわけですから、自己管理を行うことでかつての文化を継承することも充分に可能です。

強制されるのではなく、自己管理によってそれを作りだす方がよっぽど有意義と言えるのではないでしょうか。

 

あなたの可能性を生み出すのは、解体です

今回、インスタグラムの動画時間延長というニュースから解体と創造について考察してきましたが、いかがでしたか。

制限された中で嘆くことなく、逆にそれを利用してしまうのはとても素晴らしくたくましいことだと思います。

それだけの知恵をお持ちなのですから、そこで満足することなく、新しく生まれたスペースでもその力を如何なく発揮してみてはいかがでしょうか。

縛られた環境下で得られた経験は柔軟な対応力の形成に繋がり、かつて以上の創作が可能となっているはずです。縛りの解体によって新しい可能性を創造し、かつての文化も自己管理によって継承していきましょ­う。