「悪」は本当に悪なのか!?故・高倉健主演の「新幹線大爆破」が既存の価値観を破壊!


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出典 cinema.pia.co.jp

名優高倉健さんが亡くなってしまいましたが、健さんが主演した映画の名作「新幹線大爆破」を今回はご紹介します。

「新幹線大爆破」は、1975年に公開された作品です。公開当時は、海外での評価も非常に高かったようですが、現在の私たちが見ても、迫力満点でよく練られたストーリーです。出来れば、映画館のスクリーンで手に汗握りながら見て欲しい作品です…。

 

社会が生む「貧困」がもたらした悲劇…

高倉健さんは、新幹線に爆弾を仕掛ける犯人役を演じています。普通は、「爆弾なんて仕掛けて、けしからん(怒)!」となるかと思います。ですが、この映画を最初から最後までちゃんと鑑賞すると、「悪いことをした奴を懲らしめれば、世の中は果たしてよくなるのだろうか?」と観客の誰しもが考えざるを得ないでしょう。

高倉健さんは高度経済成長期の中小企業の社長を演じています。彼は失業中の地方の若者たちを雇い、救済の手を差し伸べます。

ですがその会社は融資を受けられず倒産し、自らの家庭も崩壊してしまいます。社会に負けた悲しみと虚無感から、社長と若者は新幹線に爆弾を仕掛けてしまうのです。

 

社会からはじかれた者たちの必死の抵抗

仕掛けた爆弾とは、時速80km以下になると起爆するというもので、この映画の大部分は、爆弾を取り除こうと奮闘する乗組員やスタッフ、そしてパニックに陥る観客たちの様子が描かれています。

ただこの爆弾犯たちの特徴は、‘一人も殺さない’でお金だけを手にしようとしている点です。

健さん演じる社長と貧しい若者の他に、学生運動の末、世間に居場所のなくなった青年も爆弾実行犯として加わりますが、彼らの三者三様のドラマを見ていると、彼らをここまで追い込んだものは何なのか、本当に悪いのは誰なのか?と思いを巡らせてしまいます。「悪人を叩けば、全てよし」という既存の価値観を疑います

 

本当に悪いのは誰なのか!?

映画には、責任感の強い国鉄の中間管理職を演じる宇津井健さんがいますが、正義感の強い彼の心理描写も見どころです。

物語の後半、なかなか思うように止められない暴走する新幹線を前に、幹部職員は宇津井さんに対し、「乗客の安全よりもとにかく新幹線を止めるように」と命令します。乗客の命を、“虫”と軽いもののように表現しながら…。

まだこの映画を見たことのない方のために、詳細は書きませんが、宇津井さん演じる職員は、その後、安全が100パーセント確認できない状態で自分が取った行動に嫌悪感を抱きます。乗客の命を最優先に考えていても、上役の命令に立場上、反対できなかったからです。

ここで私たち観客は、真の悪玉を発見してしまいます。権力者イコール悪だ、と。

もちろん、爆弾を新幹線に仕掛けることは当然許されないことではあります。でも、乗客を誰一人殺さず、計画を実行しようとする健さん演じる社長ら孤独な男たちと、乗客の命を軽く見る組織の権力者。そのどちらに肩入れしてしまうかは、明らかでしょう。

 

以上、いかがでしたでしょうか。今回は高倉健主演の「新幹線大爆破」をご紹介しました。

仕掛けた爆弾が破壊しようとしていたのは、私たちの、上辺で悪人と断定する安易な考え方だったのです。本当の悪は誰なのか?という問題の本質を解決しようとする思考が創造されたのではないでしょうか?