青春の感情のすべてがここに詰まっている。「ウォールフラワー」における青春
出典 http://www.cinemacafe.net/special/5507/recent/SPECIAL:『ウォールフラワー』
青春
その言葉にあなたは何を思いますか?ほろ苦い恋の思い出か、はたまたハチャメチャをやった楽しい思い出か。何もなかったという方もいらっしゃるでしょう。
今回ご紹介するのはそんな青春の感情のすべてが詰まった映画「ウォールフラワー」。
主要登場人物三人にスポットライトを当て、彼らの青春で起きた解体と構築を見ていきましょう。
1.チャーリーの解体と構築
チャーリーはこの物語の主人公で語り手です。演じるのはローガン・マーラン。
その優しそうな風貌や細やかな演技がチャーリーの人格をよく表現しています。
この映画でチャーリーが解体し再構築したものは、「過去」でしょう。
チャーリーが精神的疾患を患っていることが物語冒頭で示され、チャーリーはそれに苦しんでいます。
しかし、それを表に出すことはありません。誰にも理解されず、孤独を抱える日々。
そんなチャーリーが活発な女の子サムとその義理の兄パトリックに出会い関係を構築することで、徐々にチャーリーは自身の欲望や愛情に気付き始めます。
人と触れ合うことでチャーリーは成長を始めるのです。
そして最後、チャーリーは自身が封じ込めていた記憶と対峙し、それを解体し乗り越えます。
人と触れ合い自信を成長させることがなければ、チャーリーは封じ込めていた記憶と対峙することはなかったでしょう。
しかし、対峙することがなければチャーリーは本当の意味で自身のトラウマに起因する精神疾患を乗り越えることはできませんでした。
人との絆で構築した自身があればこそ、トラウマの解体が可能だったのです。
2.サムの解体と構築
ハリーポッターシリーズで一躍有名となったエマ・ワトソン演じるサムは活発でチャーミングな女の子です。
一見彼女には何も問題がなく、順調な学生生活を楽しんでいるように思えます。
しかし、そんなサムにも悩みやもやもやと晴れない感情があります。それは自身の自己評価でした。
自己評価が低いため、勉強では仲間たちに後れをとり、付き合う男は浮気をしたりする傍から見ればサムには釣り合わない男ばかりです。
こうした鬱屈した感情を、サムはチャーリーとの交流を通して発見します。思い込んでいる自己評価を見つめなおすのは並大抵のことではありません。
サムはチャーリーや仲間たちの力を借りて見つめなおし、自己評価を再構築していきます。
3.パトリックの解体と構築
エズラ・ミラー演じるパトリックは一見陽気でハンサムな変わり者です。パトリックはゲイですが、それを仲間には隠していません。
しかし付き合っている相手の父親には同性愛に理解がなく、表立った交際ができませんでした。
パトリックはそれでも満足していましたが、ある時相手の父親に交際がばれてしまいます。
これにより破局。パトリックは心の拠り所を失ってしまいます。
チャーリーはこの事件で、一見陽気に見えていたパトリックも悲しみや苦しみがあったことに気が付きます。
傷ついたパトリックは夜な夜なチャーリーを連れてドライブに出かけます。
そして自身の弱さをチャーリーにさらけ出すことで、過去の恋を断ち切り前を向くのです。
ウォールフラワー、壁の花とは、パーティーなどで壁にもたれかかり会話から外れている人のことです。
そうした壁の花だったチャーリーや、チャーリーの手をとり仲間に入れてくれたサムやパトリック。
皆が葛藤や痛み、苦しみを抱え悩みながらもそれを解体し、前へと進んでいきます。青春真っただ中の感情は、大人になれば忘れてしまうものかもしれません。
しかし、それはとても大切なものなのです。ウォールフラワーはそれを思い出させてくれる、貴重な映画のひとつです。