破壊こそが、明日を作り出す。「パシフィック・リム」


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出典 http://www.gizmodo.jp/2013/12/pacific_rim_pakage.html

幼いころ、映画の中のヒーローたちに懸命に声援を送った記憶のある方は少なくないでしょう。破壊される街、失われる命、懸命に戦う人々。本当にそれが存在すると思っていたあの時代。

今回ご紹介する映画「パシフィック・リム」はそんな当時の気持ちを思い出してご覧ください。

 

Kaijuが人類社会を破壊する

Kaiju(カイジュウ)が突如地球を襲い掛かることから物語は始まります。圧倒的な破壊力で次々と太平洋周辺都市を破壊していくKaijuの目的はわからず、どこからやってきたのかもわかりません。

そんなKaijuに対抗すべく作られたのが巨大兵器イェーガー。二人一組で操縦する「ドリフト」と呼ばれる手法で制御されるこの兵器の創造により、人類はKaijuに打ち勝ち始めます。イェーガーは巨大で複雑な制御機構を有しているため、右脳と左脳にあたる部分をパイロットが二人それぞれ受け持ちます。

どんなに強大な敵が襲って来ようとも、人類は決してあきらめずイェーガーを創造し、対抗したのです。

Kaijuによる都市の破壊が人類をひとつにし、新たな技術を生み出す。まさしくKaijuがもたらした破壊による創造です。日本や中国、アメリカ、ロシアといった環太平洋の国々が協力したイェーガー計画。これらの国々が真の意味で手を取り合うなど、現実には考えられません。悲しいことに。

 

「命の壁」の建造

当初はイェーガーにより優位に立っていた人類ですが、徐々にKaijuの出現頻度は高まりイェーガーの建造が間に合わず再び劣勢に立たされてしまいます。

ここで人類が選んだのは「命の壁」の建造でした。海からやってくるKaijuを防ぐため、陸と海の間に壁を設けようという計画です。

これは後ろ向きな創造の象徴ともいえるでしょう。太平洋すべてをカバーし、巨大なKaijuに耐える壁の建造など不可能なことです。命綱などない危険な現場で、死者数など誰も知らない。

そんな負の創造を迫られるほどに、人類は絶滅の危機に瀕してしまうのです。完成予定日の欄には「永遠に無理!」と殴り書きされ、作業している誰もがこんなものは役に立たないと思っている、悲しい創造です。

 

「ドリフト」で解体される心

先述したイェーガーの操縦方法「ドリフト」。これは二人一組になってひとつの機体を操縦するものです。戦闘機の複葉機のように二人の役目が分かれているのではなく、ひとつの機体の右脳と左脳を操縦するわけですから二人が完全に同調する必要があります。

この際、ふたりはそれぞれお互いの記憶や感覚を共有することになるのです。人にはだれしも秘密や、隠したい傷があるものです。しかしドリフトすることによって相棒にはそれが筒抜けになってしまうのです。相手の記憶を無意識に追いかけてしまうことで重大な暴走事故を引き起こすこともあります。

「心」というものは取り扱いが非常に難しいものです。それが自分のものでないなら、なお一層困難になります。

しかし、それを乗り越え心を開き相手を受け入れることで初めて「ドリフト」は可能となるのです。心の解体がなければイェーガーは操れません。心を開き協力することで初めて、私たちは仲間を得て大きな物事に立ち向かってゆけるのかもしれません。

 

破壊こそが、明日を作り出す。「パシフィック・リム」いかがでしたでしょうか?この近年まれにみるまっすぐな怪獣映画を見るときは、ぜひ、6歳のころに帰ってご覧ください。巨大怪物への美しい詩である本作は2013年公開ながら2016年現在でもリバイバル上映がされるほどの熱狂的なファンを持っています。

もしも劇場でご覧になれる機会があるならば、そして4D上映があるならば迷わず4D上映でご覧ください。

そこには知恵と勇気でもって生きようとする彼らの姿があります。Kaijuは本当にいて、太平洋の海のどこかで彼らは本当に闘っているのです。そう信じて、ご覧ください。