本当の自分とは? ボリウッド発「きっと、うまくいく」


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出典 http://feelgrafix.com/

ボリウッド映画、なんて言葉を聞いたことはありますか?今やハリウッドをしのぐほどに成長したインド映画市場から生まれたインド映画のことです。

今回ご紹介する映画「きっと、うまくいく」もそのひとつ。ボリウッド映画市場最高傑作との呼び声も高い本作は、一見の価値ありです。

今回は三人の主人公それぞれにスポットを当ててこの映画が描き出した解体と創造を見ていきたいと思います。

 

ファラン・クレイシーが受けた解体と目的の創造

本作の語り部であるファランは生まれたときからエンジニアになることを決められていました。

これはインドの「男はエンジニアに、女は医者に」が最高だと考えられていることを反映させた設定です。息子を最高の工科大学に入れるために、家に一台しかないエアコンを息子の勉強部屋に着けるなど、ファランの父親はファランをエンジニアにすることに固執しています。

しかし、ファランの大学での成績は底辺でした。実はファランは動物写真家になりたがっていたのです。それを見抜いたランチョーは「写真を愛しているなら工学と結婚するべきじゃない。写真と結婚するべきだ」と諭します。

そしてランチョーはファランがずっと持っていた憧れの写真家への手紙を勝手に送り、写真家から助手にならないかと誘う返事を受け取るのです。

それを知ったとき、ファランはエンジニアという自分のものではない目的を解体し、写真家という本当に自分が求める目的を創造したのです。

 

ラージュー・ラストーギーが受けた解体と手段の創造

ラージューは貧しい家庭に生まれ、工学を学びエンジニアとして成功することを夢見ていました。

しかし自分に自信がなく、あらゆる神様にお祈りをささげお守りを全ての指に着けるほどでした。エンジニアになることで貧困を抜け出すというインドのモデルケースのような家庭です。

そのため工学に励んでいたラージューですが、どうしても成績は底辺でした。ランチョーはそれを自信のなさによるものだと指摘します。お守りなどに頼らず、自分を信じることが大切だと諭し、ラージューの手段を解体しました。

そしてラージューは新たに自分自身を信じるという新たな手段を創造したのです。

 

ランチョーがもたらした解体とランチョーが受けた解体

この映画で最も重要な「解体役」を担っているのがこのランチョーです。

大学時代、ランチョーは「うまーくいく」という言葉とともに親友のファランやラージューにとどまらず、大学自体の方針(詰め込み重視)を疑問視し、再三学長にその解体の提案をしています。

また、学長の娘の婚約相手の本性を解体してみたり様々な発明品を作り出したりと、ことのほか解体と創造が得意な人物です。では、大学生活において最後に彼が解体したものとは?それは自分自身の存在でした。

解体され、行方不明となったランチョーを追い親友たちは旅をはじめ、ランチョーが住んでいると思われている屋敷にたどり着きます。しかし、そこで彼らは驚くべき事実を知り、ランチョーという人物を解体することになります。

彼は実はランチョーではなく、ランチョーとは地方の権力者の息子だったのです。勉強嫌いだった彼の代わりに、召使で勉強が好きだったランチョーが替え玉として大学に入り、そして首席で卒業し、姿を消したのです。

本当の名前もわからないまま、親友たちは本物のランチョーから、彼が今いる場所を聞き出しそこへ向かいます。するとそこに待っていたのは、まるでかつてのランチョー(ではなかった誰か)の理想を具現化したような小学校だったのです。

ようやく再会した彼らは、彼の本当の名がフンスク・ワングルだと知ります。それは偉大な発明家として有名な名前だったのです!

こうしてランチョーことフンスク・ワングルは彼らの親友によって解体を受け、ようやく三人で再会することができたのでした。

 

ランチョーはこの映画を通じて様々なことを訴えかけてきます。今あるインド社会の問題や、自分で自分の道を決めることの大切さ。

もしもあなたが何かに迷ったときは、この映画をみてランチョーに聞いてみるのもいいかもしれません。彼はきっとこう言うでしょう。「大丈夫。うまーくいく」