墓石の解体はお墓の引越しに必要不可欠。現在のお墓事情の豆知識



昔の日本は村社会で、住人が一地域から離れることはあまりありませんでした。だからこそ、お墓は代々受け継がれるものだったのです。

しかし今では核家族化が進んだけでなく、住居の移動も激しくなりました。出生地から遠く離れたところに住み、お墓参りもなかなかできない人も多いのではないでしょうか。

今ではそんな現在の状況に合わせて、お墓の引越しも増えてきました。家と同じく古いお墓石を解体し新しく建てるのです。

 

昔と違う!日本のお墓事情

お墓というものは、建てるのにもいろいろな取り決めがあります。

管理を継ぐ者が確認できないと建てることができませんし、途中で管理者がいなくなると無縁墓として手続きが行われ改葬されてしまうこともあります。

後継者が途絶えるとか、管理者がいなくなるというのは、従来の日本ではよほどの事情がない限り大事件だったでしょう。

しかし現在では核家族化や少子化、居住地の移動によって、お墓の管理者がいつのまにか不明になってしまったり、足が遠のき疎遠になってしまったりすることはけっして珍しくありません。

そのため、今は永代供養のように血族に代わってお寺や法人が半永久的に管理してくれるお墓もあります。また、住所の移動に伴ってお墓の引越しも行われるようになりました。

 

お墓の引越しに必要な手続き

お墓の引越しには、家の引越しと同じく公的な手続きが必要です。

具体的には、現在のお墓が属する市町村役場へ改葬許可を申請し、改葬許可証明書を得なければなりません。

お墓の引越しの流れを大まかに記すと以下のようになります。

  • 現在の霊園、墓地がある市町村で「改葬許可申請書」をもらう。
  • 新しい霊園、墓地と手続きして「墓地使用許可証」もしくは「受入証明書」を発行してもらう。(新しいお墓を建てる)
  • 現在の霊園、墓地の管理者から「埋葬・埋蔵証明書」を発行してもらい、「改葬許可申請書」に署名と捺印をもらう。
  • 上記の書類とともに「改葬許可申請書」を、現在の市町村に提出する。
  • 約1週間ほどで「改葬許可証明書」が発行される。
  • 現在の霊園・墓地へ「改装許可証明書」を提示して、古いお墓からお骨を取り出す。
  • 古いお墓は解体して更地にする。
  • 移転先の霊園、墓地の管理者に「改葬許可証明書」を提出し、新しいお墓にお骨を納める。

霊園、墓地の管理者によっては宗教上の手続きや「閉眼供養」「抜魂供養」といった儀式も必要になりますが、公的手続きは共通です。

そして、古いお墓の解体が必要になるのもまた同じです

 

古いお墓は解体して更地にする

お墓の移転するときには、大きく分けて3つの方法があります。

1つは、古いお墓を解体し、新しいお墓を建てる方法。

次に、古いお墓の墓石を新しい墓所に移動させる方法。

最後に、古いお墓を解体して、お骨を永代供養墓に納める方法です。

どれを選ぶにしても古いお墓は解体が必要になってきます。お骨の一部を移動させ古いお墓を残す以外では、お墓そのものを解体して更地に戻さなければなりません。

大抵の場合は、墓石を販売している石材店が請け負ってくれます。

 

お墓はご先祖様の家も同然。引越しには解体が必要です


このようにみてみると、お墓の引越しは、家の引越しと大差ありません。

お墓は家、墓地は土地です。引越しするためにはさまざまな手続きが必要ですし、次に土地と使用する人のためにも古いものは解体し綺麗に更地に戻さなくてはならないのです。

建築物の解体と規模は違っても、その意義は同じ。お墓の引越しでも解体は大切な作業になります。

お墓はときに終の棲家に例えられることもありますが、まさに家と同じなのです

もしお墓の引越しをする必要があったら、解体するときに感謝の気持ちを祈りに込めてみませんか。

あなたの先祖がずっと眠っていた思い出の家を解体するのですから。

 
【参考文献】
■杉村和美(2005)『建てるお墓 継ぐお墓』小学館.
■古谷みどり(2006)『変わるお葬式、消えるお墓【新版】ー高齢社会の手引きー』岩波書店.