解体するのが怖くなるほどの人生を謳歌する?ディカプリオが熱演する問題作「ウルフ・オブ・ウォールストリート」が教えてくれるもの


吐き気を催すほどに過激な実話「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

img_wolf01出典:https://dealbook.nytimes.com

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(The Wolf of Wall Street)は2013年にアメリカで公開された、映画の主人公であるジョーダン・ベルフォートが著した『ウォール街狂乱日記 – 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』を原作にした映画です。

ベルフォート役はレオナルド・ディカプリオが演じています。この映画を見る前に注意が必要なのは「これは実話だ」と認識してから見始めることです。それほどに「一人の男の人生」としては狂気的で過激なのです。少しエピソードを見知るだけで、「解体したくなくなるほどに、おぞましいストーリー」です。

その狂気に満ちた彼の人生のいくつかのエピソードを以下に紹介します。

  • 「狂った社員が水槽の金魚を食べる(日常的に)」
  • 「豊胸手術をしたかった女性社員が金と引き換えに頭を丸刈りに」
  • 「社内でドラッグが黙認状態、売春婦が会社をうろつく」
  • 「ヘビやチンパンジーがオフィスにうろうろしていた」
  • 「資産を逃がす為に船で出国し途中で荒波に巻き込まれ沈没」

 

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のあらすじ

アメリカの金融街ウォール・ストリートで株式の売買の仲介人としてキャリアをスタートしたベルフォートは、天才的に巧みな話術と詐欺すれすれ(時に完全に詐欺的な)の営業トークでメキメキと頭角を現しました。学歴もコネもなにもない男が口先と、豪快な金遣いによって作り出される見るものに夢を持たせるキャラクターを作って稼ぎ出したのは年収49億円とも言われる巨額の収入でした。金のある人生に目覚めた彼は、狂気的に金を追い求め、更に巨万の富を得ていきます。

彼は株式仲介会社の経営者として、会社を成長させる過程で18歳から22歳ほどのとても若い男たちを次々と採用していきました。

金融商品(主にペニー株と呼ばれるジャンクな株式)を電話によるセールスで顧客に(法外で詐欺的な値段で)販売し、販売実績を上げた社員には多額なボーナスを与えるという、アメリカのウォール街では当たり前に行われている金権マネージメントを、最もクレイジーに実行した男だと言われています。

100ドル札の束を丸めてゴミ箱に投げたり、クルーザーから札束をばら撒いたりといった手法を用いて、自らをアメリカンドリームの体現者として徹底的に演出する事で、支持を集めていったのです。ベルフォート氏は自らも天才的な営業トークで多額のセールスを上げる天才的な営業マンでしたが、荒くれ者の若者たちに夢を見せ、狂気のごとく金を追わせる為のテクニックもリーダーシップも持っていたのです。(彼は現在モチベーションを上げる事を専門とするスピーカー業をしている。)

そして、ボーナスを得た若い男性社員はドラッグに溺れ(まくり)、なんと、会社の地下には常に売春婦が待機している、といったような信じられないような事が、映画の為の脚色ではなく事実として行われていたそうです。

自らもドラッグに溺れていたベルフォート氏と狂った社員ばかりによって構成された彼の会社は案の定コントロールを失い暴走することに。そして、彼の会社は詐欺やマネーロンダリングといった行為によってFBIの捜査対象になってしまったのです。

 

彼の人生を解体して問いかけるのは「失ってはいけないもの」

映画の中で描かれているのは、とても華やかでクレイジーな彼の人生の一面と、一方で誰もが一度は夢を見る大金を手にしながら寂しさや不安に怯える一面、つまり、彼の人生の光と影両面です。

コメディタッチで描くことでシリアスさを抑えつつも、メッセージとして見るものに問いかけているのは「幸せな人生を歩むために失ってはいけないものは何か」というとてもシリアスな問いかけです。

彼は全財産、そして金に群がっていた周囲の友人、そして愛する人々を一夜で失い、22ヶ月間投獄されるという転落を経験しました。彼は現在でも投資家から詐取したと認定されている金額の賠償・返還を求められています。その金額は100億円以上とも言われています。彼はこの映画の権利や著書からの収入が2億円以上あったと言われていますが、賠償を求められている金額には遠く及ばず、一生涯に及んで返済を求められることになってしまったのです。

いわば、彼は豊かさや栄光の求め方を誤ってしまったのです。お金とは「価値のあるものに対して支払われるべきもの」です。ここでテクニックを用いてその価値を偽ったり、スピードを求めた時には、必ず後にその代償を求められたり、調整が行われ、「作られた幻想は解体される」ことが、彼の歩んできた人生から学ぶことができます。

そして、彼が失った「人生で失ってはいけないもの」もこの映画や彼の人生のストーリーから学ぶことができます。盲目的に、経済的な豊かさばかりを追求する日々を送っている人は、興奮すること間違い無しのこの映画を見て、逆に心を落ち着けるのかもしれません。

この映画はレオナルド・ディカプリオがブラッド・ピッドと映画化する権利を入札で争った作品です。環境保護活動にライフワークとして精を出すディカプリオが彼の人生に興味を持ち演じるという点も「人生」について考えるキッカケを与えてくれる作品です。