リーマンショックのなぜ?を解体した映画「マネーショート」を解体する
映画:「マネー・ショート 華麗なる逆転」の概要について
出典:https://www.bustle.com/articles/
映画「マネー・ショート 華麗なる逆転」は2008年に起こったリーマンショックの裏側で、市場崩壊・相場大崩に喘ぐプロの機関投資家たちを地道な調査に裏付けされ得た巧妙な手段で出し抜き、巨額の富を得た4人の型破りな投資家達の物語です。
原作はマイケル・ルイス氏が著した「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」で、パラマウント社が製作し、作中でも熱演するブラッド・ピットのプロダクションも製作に関わっています。主演を勤める4人の俳優も豪華です。
ライアン・ゴズリング、クリスチャン・ベール、ブラッド・ピット、スティーブ・カレル、という本格派4人が作り出す世界観と「何故起こったのかが分かり辛いリーマン・ショック」を解説しながらストーリーがテンポ良く進むというストーリーに引き込まれあっという間に時間が過ぎてしまう映画です。
2016年3月に日本で公開されたこの映画は現在DVDやストリーミングサービスなどで視聴が可能です。
「マネー・ショート」のあらすじ
サブプライムローンの価値暴落をきっかけに、金融市場に参加していた金融機関が次々と経営危機に陥った事で起こったリーマン・ショック。その詳しい説明は是非本作と原作を見ていただきたいのですが、ここでは少しだけ本作のストーリーをご紹介します。本作では要所要所で「なぜ?」に解説が加えられます。まさにリーマン・ショックの「解体新書」的な映画になっています。
クリスチャン・ベール演じる主人公の一人マイケル・バーリはとても変わり者のヘッジファンドの経営者です。彼は事件の1年前の2007年の時点でサブプライムローンの暴落が起こると予想し、関連するクレジット・デフォルト・スワップ(通称CDS)の市場に注目し、金融機関にディールを持ち掛けます。このCDSとは簡単に言うと「2者間で債務の履行(つまり借金の返済)に保険を掛けることを目的とした金融商品」のようなものです。
もう少し説明を加えると、リーマン・ショックを語る時における「サブプライムローン」とは「信用力がない人でも持ち家を購入できるように住宅ローンを貸し出した事によって生まれた少し返済にリスクがある借金」です。我々、消費者が借りたお金は往々にして金融市場で商品として取引されています。サブプライムローン危機でも、住宅ローンを貸し出したローン会社は契約成立後に直ちにその権利を金融機関に売却していました。
ここで、「AがBに一定の保険料(掛け金)を払うから、万が一この借金の返済が滞った時はBがAに保証してね」というものです。つまりABの二者間で「賭け」をするのに等しいのがこのクレジット・デフォルト・スワップです。重要なのは、このAとBはこの借金や住宅ローンの当事者でも関係者でも、ある必要がないということです。つまり、バーで野球の試合の勝利チームに掛けるような商品を証券会社は販売し、消費者の預金を運用する金融機関などが購入していたのです。
マイケルは当時、絶対に返済が滞らないと信じられていたサブプライムローンに対して、金融機関を相手に「賭けをしないか?」と持ちかけたのです。金融機関はマイケルから掛け金を受け取り収益になりますし、サブプライムローンが暴落するなんて思いもしなかったので、その誘いに乗ります。
このマイケルの動きに他の主人公たち(全員投資家もしくは銀行家)も、呼応し始めます。ウォール街で銀行に務める野心的なジャレッド・ベネット(ライアン・ゴズリング)は自ら大金を投じ賭けに出ます。ジャレッドの動きを察知したマーク・バウム(スティーブ・カレル)、そして既にウォール街を引退していたベン・リカート(ブラッド・ピット)のところにも、偶然この動きを知った2人の若き投資家が話を持ちかけます。こうして、4人それぞれが自らの人生を賭けるほどの大勝負に向けて動き出します。
映画「マネー・ショート」自体を解体する
この映画の素晴らしい点は、4人の主人公が歩むそれぞれのストーリーを異なる時間軸で紹介しながら、最終的には金融市場の崩壊という1つの地点に誘導する過程で「リーマン・ショックとはなんだったのか」を映画を見た聴衆に自然と理解させる事を実現している点です。
難しい専門用語には解説を与えつつも、1人の主人公のイベントに纏わる謎を、別の主人公のイベントで描写し解説することによって「なるほど!」を連続的に生み出していく方法は飽きを与えず、見終わった時に大きな満足感を作り出します。
そして、映画を見終わった時、エンターテイメントとしての満足度はさることながら、社会問題としての金融市場の在り方について問題提議を視聴者に行えている点はジャーナリズム作品としても評価できます。そして、解説を与えられた視聴者が「リーマン・ショックってじつはこうだったんだよ!」と周囲に話したくなるような仕掛けがこの映画の最大のミソでしょう。
世界の金融市場のルールを解体するほどのショックをもたらしたリーマン・ショックの謎を解体した映画「マネー・ショート」は聴衆の心も解体することができていたのです。










